弁護士コラム

渋谷の法律事務所の解決事例:約3年前の短期間の関係について、勤務先宛てに慰謝料300万円を請求された事案において、裁判例の水準と求償権の放棄を軸に交渉して80万円へ減額したうえ、相手方にも違約金を伴う接触禁止・口外禁止を課す双方向の合意書により、受任から約1か月で解決した事例

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【ご相談の概要】

ご相談者は30代の女性で、勤務先が同じ既婚男性との過去の関係について、その配偶者(以下「相手方」といいます。)の代理人弁護士から慰謝料を請求されているとしてご相談にいらっしゃいました。

ご相談者によれば、男性との関係は約3年前の約半年間にとどまるものでした。関係が相手方に発覚した際、ご相談者はご自宅を訪れた男性と相手方から「二度と会わないこと」を求められ、その場で誓約書に署名しました。以後、ご相談者はこの誓約を守り、約3年間にわたって男性との私的な接触を一切断ってきました。

ところがその後も、相手方からはご相談者宛てに、転居や異動・退職を求める内容の手紙が繰り返し届いていました。そして今回、相手方の代理人弁護士から、慰謝料300万円の支払を求める内容証明郵便が届きました。この書面は、ご自宅ではなくご相談者の勤務先宛てに送付されたものであり、書面受領から10日以内に回答がない場合には直ちに訴訟に移行するとの内容でした。

ご相談者のご要望は、①慰謝料を裁判実務の相場の範囲まで減額すること、②訴訟を避け、交渉によって早期に解決すること、③勤務先を含め、相手方から直接連絡が届く状態を止めること、④転居や異動・退職、直接の面会といった法的義務のない要求には応じないこと、⑤和解にあたっては、相手方からの接触や本件の口外を防ぐ条項を設けること、というものでした。もっとも、ご相談者は、条項面の要求を強く打ち出しすぎてかえって交渉がこじれることは避けたいとのご意向もお持ちでした。

【解決の方針と交渉の経緯】

当事務所の弁護士がご相談者の代理人に就任し、ご依頼をいただいた当日のうちに相手方代理人へ受任通知を送付して、以後の連絡窓口を当職に一本化しました。この受任通知では、従前、ご相談者の勤務先宛てに弁護士名義の書面が郵送された経緯があることを具体的に指摘し、勤務先を含めてご本人への連絡は厳に控えるよう求めました。職場で本件が知られるリスクを、初動の段階で遮断することを最優先したものです。

交渉の方針としては、不貞の事実を認め、相手方に心からお詫びしたうえで、争点を「金額の相当性」に絞りました。そのうえで、①関係は約半年間という比較的短期間にとどまること、②関係はすでに約3年前に解消されており、以後ご相談者は男性との私的な接触を一切控えてきたこと、③そのため裁判実務上、本件が相手方ご夫婦の婚姻関係に与えた影響は限定的と評価されるのが通常であることを主張しました。今後も正当な理由なく男性と接触しないことも、あらためてお約束しました。

金額については、不貞期間が短期間にとどまる同種事案の裁判例に照らせば、慰謝料はおおむね80万円から100万円程度の範囲で認定される例が多いこと、さらにご相談者が男性に対する求償権を放棄する場合には、40万円から50万円程度での解決が相当であることを具体的に示しました。共同不法行為者の一方が慰謝料を支払った場合、他方に負担部分を求償できるのが原則ですが、これを放棄すれば、相手方は受け取った金銭が配偶者を通じて実質的に戻っていく事態を避けられます。そのうえで、求償権の放棄を前提として解決金80万円を提案し、この金額が求償権放棄を前提とした相当額を大きく上回る最大限の誠意であること、これを超える増額を求めるのであれば民事訴訟の場で慰謝料額を確定させることもやむを得ないことを明確に伝え、回答期限を設定しました。

相手方はこの提案を受け入れ、当方の回答から約1週間後には、解決金80万円とする合意書案が送られてきました。

もっとも、この合意書案には、ご相談者にとって看過できない偏りがありました。男性との接触禁止条項と口外禁止条項について、違反した場合の違約金(違反行為1回につき50万円)が、ご相談者だけに課される内容になっていたのです。相手方からは、これまでも手紙の送付や勤務先への書面の郵送が行われてきました。このままでは、ご相談者の側だけが重い違約金で縛られ、相手方からの接触や口外には何らの歯止めもない合意となってしまいます。

そこで当方は、まず、口外禁止条項に違反した場合の違約金を相手方にも及ぶ双方向のものとすること、そして、当事者双方が、自ら又は第三者を介して、訪問・架電・文書・電子メール・SNSその他一切の態様による正当な理由のない接触をしないことを誓約する相互の接触禁止条項を新たに設けることを求めました。相手方がこれに応じた修正案を示したのを受けて、さらに、この相互の接触禁止条項に違反した場合にも相手方に違約金を課すよう追加の修正を求め、これも受け入れさせました。いずれも、ご相談者のご意向を踏まえ、条項の文言を具体的に示して「この形で修正してほしい」と明確に伝える方法をとり、金額の合意を崩すことなく条項面の修正だけを短期間でまとめています。

【解決の内容】

交渉の結果、ご相談者が相手方に対し、解決金80万円を一括して支払う内容で合意が成立しました。当初請求額300万円からの220万円、率にして約73%の減額です。

合意書の主な内容は、次のとおりです。①ご相談者は不貞関係にあったことを認めて謝罪すること、②解決金80万円を合意書締結日から2週間以内に支払うこと、③ご相談者は正当な理由がある場合を除き男性と接触・交際しないこと、④当事者双方は、本件に関する事項を第三者に口外しないこと(相互の口外禁止条項)、⑤当事者双方は、互いに自ら又は第三者を介して正当な理由のない接触をしないこと(相互の接触禁止条項)、⑥ご相談者が③から⑤に違反した場合、相手方が④又は⑤に違反した場合には、違反行為1回につき50万円の違約金を他方当事者に支払うこと、⑦ご相談者は男性に対する求償権を放棄すること、⑧本合意書に定めるほか何らの債権債務がないことを相互に確認すること(清算条項)。

相手方がそれまで手紙で求めてきた転居や異動・退職に関する条項は、一切含まれていません。

訴訟に移行することなく、受任から約1か月で合意書を締結しました。解決金は合意書締結の数日後に当事務所から相手方代理人の預り金口座へ送金し、領収書の発行を受けて、本件は終了しました。ご相談者が相手方と直接やり取りをすることは、最後までありませんでした。

【良い解決を実現できたポイント】

① ご依頼の当日に受任通知を送付し、勤務先への連絡を明確に止めたこと。相手方の書面はご相談者の勤務先に届いていました。受任通知の中で、勤務先へ書面が送られた経緯を具体的に指摘し、勤務先を含めたご本人への連絡を控えるよう求めたことで、職場で本件が知られるリスクを初動で遮断しました。

② 「関係の短さ」と「解消後の誠実な対応」を減額事情として整理したこと。関係が約半年と短期間であったことに加え、約3年前に関係を解消し、その後一切の私的接触を断ってきたという事実は、婚姻関係への影響が限定的であることを示す有力な事情です。これを裁判例の水準と結びつけて示したことで、300万円という請求額に根拠がないことを明らかにしました。

③ 求償権の放棄を「対価」として明示し、提示額の根拠を数字で示したこと。裁判例の水準を前提に、求償権を放棄する場合の相当額まで具体的に示したうえで、それを上回る80万円を「最大限の誠意」として提示しました。そのうえで、これ以上の増額を求めるなら訴訟もやむを得ないことを伝えたことで、相手方は約1週間で当方の提案額を受け入れました。

④ 金額の合意後も、条項の偏りを見逃さなかったこと。本件で金額と同等に重要だったのが、合意書の条項です。当初の合意書案は、違約金がご相談者だけに課される一方的な内容でした。示談は金額が決まると安心してしまいがちですが、当方は条項を精査し、二度の修正を経て、相手方にも違約金付きの接触禁止・口外禁止を課す双方向の内容に改めました。長年にわたり手紙や勤務先への書面送付を受けてきたご相談者にとって、相手方からの接触に違約金という具体的な歯止めがかかったことは、金額の減額と並ぶ大きな成果でした。

なお、本件は当事務所が受任した事案における結果であり、慰謝料の減額幅は個々の事情によって大きく異なります。もっとも、相手方から届いた通知書の金額が、そのまま裁判所で認められる金額であるとは限りません。また、合意書の条項は、署名した後に変更することは極めて困難です。

過去の交際について配偶者から慰謝料を請求されてお困りの方、勤務先に通知書が届いてしまった方、転居や退職を求められてお悩みの方、相手方から示された合意書案の内容に不安をお持ちの方は、署名される前に、渋谷に所在する馬場綜合法律事務所までお気軽にご相談ください。

初回相談は無料です。オンライン相談も可能ですので、お気軽にご連絡ください。

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