弁護士コラム

渋谷の法律事務所の解決事例/不貞相手が「すでに婚姻関係は破綻していた」として賠償義務を全面的に否定した事案において、写真・動画・録音・メッセージを積み上げて破綻の抗弁を退け、裁判所の和解案から35万円を上積みした解決金200万円の和解を実現した事例

相談事例
目次

ご相談の概要

ご相談者は40代の女性で、夫の不貞相手(以下「相手方」といいます。)に対する慰謝料請求についてご相談にいらっしゃいました。

ご相談者によれば、ご夫婦は共通の団体活動を通じて知り合い、婚姻後もその活動をともに続けてこられました。ご相談者は夫の様子から不貞を疑って問いただしましたが否認されたため、探偵会社に調査を依頼したところ、夫と相手方が宿泊を伴って行動している事実が確認されました。ご相談者は相手方と直接面談して調査報告書を示しましたが、相手方は不貞を否認しました。その後、ご夫婦は別居し、協議離婚に至っています。ご相談者は本件により適応障害を発症し、通院されていました。

相手方は当初から弁護士を選任し、交際および肉体関係があったこと自体は認めながら、「不貞が始まった時点で、ご相談者ご夫婦の婚姻関係はすでに破綻していた」として、賠償義務を全面的に否定しました。

不貞行為に基づく慰謝料請求は、不貞の時点で婚姻関係がすでに破綻していた場合には、法的に保護されるべき利益が存在しないとして認められません。相手方は、過去に約4か月間の別居があったこと、警察が臨場した経緯が複数回あること、ご相談者が激高する様子を撮影した動画があること、さらにはご相談者自身にも異性関係があったことなどを根拠として挙げており、決して容易な事案ではありませんでした。

ご相談者のご要望は、①相手方の責任を明らかにし、相応の慰謝料の支払を受けること、②不貞の立証のために支出した探偵の調査費用を回収すること、③相手方の不誠実な対応に対して毅然と対応すること、というものでした。

解決の方針と交渉の経緯

当事務所の弁護士がご相談者の代理人に就任し、まず相手方に受任通知および通知書を送付しました。もっとも、相手方は届いていないはずのない連絡について「届いていない」と述べ、指定する連絡先が二転三転するなど、交渉に真摯に応じる姿勢が見られませんでした。当方はこれらのやり取りを都度記録し、後の訴訟において証拠化しています。

相手方代理人から、交際および肉体関係は認めるものの婚姻関係の破綻を理由に賠償義務を否定する旨の回答があったため、当方は、慰謝料300万円、探偵の調査費用184万8000円、弁護士費用相当額を合わせた合計533万2800円の支払を求めて訴訟を提起しました。

訴訟における主戦場は、「不貞が始まった時点で婚姻関係は破綻していなかった」という点の立証です。当方は、婚姻共同生活の実態を、量と質の両面から徹底して立証しました。

第一に、100枚を超える写真について、裁判所からの求釈明に応え、主要な写真1枚ごとに日時と場所・出来事を特定した対照表を作成しました。単なる写真の束を、時系列に沿った立証資料へと変換したものです。

第二に、ご家族を伴う旅行や、夫婦での日常の様子を撮影した動画を複数提出しました。

第三に、夫の外出時にご相談者が見送る場面の録音とその反訳を提出し、夫婦間に一定の親密な習慣が継続していたことを直接立証しました。これは、相手方が夫から伝え聞いたとして主張していた夫婦関係の説明を、正面から弾劾するものです。

第四に、相手方が破綻の切り札として提出した「ご相談者が激高する様子を撮影した動画」に対しては、撮影日が特定されたことを起点に、その当日にご夫婦の間でやり取りされた穏やかな内容のメッセージ、前日および翌日の日常的な連絡、さらに約1か月半後にご夫婦で旅行に出かけた際の記録を組み合わせて提出しました。動画を一つの点として見るのではなく、その前後の時間軸の中に置き直すことで、一時的な口論の一場面を恣意的に切り取ったものにすぎないことを示したのです。相手方の切り札を無害化した、本件で最も効いた立証でした。

第五に、相手方の主張する破綻の根拠を、一つずつ事実で切り崩しました。別居は不貞の4年以上前の約4か月間にとどまり、その後は同居が継続していたこと、警察の記録はご相談者の身を案じた夫が通報した際のものであって主張されるような趣旨のものではないこと、ご相談者自身の異性関係とされる点は事実に反することを、それぞれ具体的に反論しました。

他方、当方は「相手方の責任の重さ」についても積極的に立証しました。不貞が始まる直前に夫と相手方との間で夫婦が円満であることを前提とするやり取りが交わされていたこと、ご相談者・夫・相手方が並んで写った写真が存在し、相手方が婚姻の事実と夫婦関係の実態を認識し得る立場にあったこと、ご相談者の妊活に関わる出来事について相手方が示した言動、宿泊先の予約においてご相談者の姓名が用いられていた事実などを証拠として提出し、相手方が事情を認識したうえで不貞に及んだ悪質性を明らかにしました。

なお、証拠については「多ければよい」というものではありません。本件では、ご相談者側の心証を損ねかねない資料はあえて提出しないという判断も行い、争点がぼやけることを避けました。

探偵の調査費用については、裁判例を引用しつつ、夫が不貞を否認して調査を促すような発言までしていた経緯、客観的な証拠が皆無であったこと、調査期間が約9日間と短くホテルでの宿泊が確認された時点で終了しており必要最小限であったことを挙げて、支出との相当因果関係を主張しました。

解決の内容

審理を経て、裁判所から解決金165万円という和解案が提示されました。裁判所は、判決に至った場合には探偵の調査費用は認定しないとの見通しも示していました。

当方はこの和解案を直ちに受諾せず、ご相談者が調査費用として184万8000円を現に支出していることを示したうえで、250万円を逆提示しました。あわせて、裁判官との個別の協議において、相手方の資力に関する具体的な事情と、ご相談者の被害感情の強さを説明し、増額を求めました。

その結果、解決金200万円で和解が成立しました。裁判所の和解案から35万円、率にして約21%の上積みです。

和解条項は、当方が起案した案がほぼそのまま採用されています。その骨格は次のとおりです。まず、解決金の額を200万円と立てたうえで、そのうち180万円を分割して完済したときに残額20万円の支払義務を免除するという構成としました。他方、分割金の不払いが一定額に達したときは当然に期限の利益を失い、200万円から既払金を控除した額を直ちに支払わなければならないこととしています。すなわち、約定どおり支払えば180万円で済むが、支払を怠れば200万円全額に戻るという設計であり、履行を強く担保するものです。

あわせて、初回に100万円をまとめて支払わせて回収リスクの高い部分を前倒しする設計、年3%の遅延損害金、振込手数料の相手方負担、双方向の口外禁止条項、清算条項を定めました。

受任から和解成立までの期間は約1年5か月、うち裁判外の交渉が約4か月、訴訟係属が約1年です。

良い解決を実現できたポイント

① 不貞慰謝料請求における最大の防御である「婚姻関係破綻の抗弁」を封じたこと。本件は、ご相談者側にも別居歴、警察の臨場記録、激高する様子の動画といった、相手方に有利に働きかねない材料が揃っていた事案でした。それでも、写真100枚超と日付一覧表、動画、録音とその反訳、メッセージという多層的な客観証拠によって、婚姻共同生活が継続していた実態を立証し切りました。不貞の証拠があるだけでは足りず、「婚姻関係が破綻していなかったこと」を示せるかどうかが勝敗を分けます。

② 相手方の切り札を、前後の時間軸で無力化したこと。口論の動画は、それ単体で見れば夫婦関係の悪化を示すように見えます。本件では、撮影当日の穏やかなメッセージ、前日・翌日の日常的な連絡、約1か月半後の夫婦旅行を組み合わせて提出し、「一場面の恣意的な切り取り」であることを示しました。証拠は量ではなく配置で効く、ということを示す一例です。

③ 不利な証拠をあえて提出しないという判断を行ったこと。手元にある資料をすべて出せばよいというものではありません。ご相談者側の心証を損ねかねない資料は意図的に外し、争点を絞り込むことで、主張全体の説得力を高めました。

④ 裁判所の和解案をそのまま受けなかったこと。裁判所が調査費用は認定しないとの見通しを示す中で、安易に165万円を受諾せず、支出の実額を示して250万円を逆提示し、相手方の資力とご相談者の被害感情を具体的に説明して増額を求めました。その結果、35万円の上積みを引き出しています。和解案が提示された後にも、なお交渉の余地は残されています。

⑤ 「勝ち取る」だけでなく「回収する」ところまで条項を設計したこと。分割払いの和解は、途中で支払が止まれば絵に描いた餅になります。本件では、200万円を立てて180万円の完済で20万円を免除するという構成、期限の利益喪失条項、初回100万円の一括支払、遅延損害金、振込手数料の相手方負担までを当方が起案し、ほぼ全面的に採用されました。あわせて口外禁止条項を置き、ご相談者のプライバシーも保護しています。

⑥ 相手方の不誠実な対応に一貫して毅然と対応したこと。交渉段階での連絡先をめぐる不誠実な対応、不合理な弁解に終始する訴訟態度について、当方は都度これを記録・証拠化し、慰謝料の増額事由としても主張しました。相手方の対応そのものが、和解額の形成に影響したものと考えられます。

配偶者の不貞相手に慰謝料を請求したところ「もう夫婦関係は破綻していた」と反論されてお困りの方、不貞の証拠はあるのに相手方が支払を拒んでお悩みの方、探偵の調査費用を負担された方は、渋谷に所在する馬場綜合法律事務所までお気軽にご相談ください。

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