ご相談の概要
- ご相談者は40代の女性で、幼いお子様(当時3歳の長女)を連れて自宅を出て別居を開始した直後に、当事務所にご相談にいらっしゃいました。
- ご相談者によれば、夫は、気に入らないことがあると物を投げる、ドアを激しく叩く、家族の前で大声で怒鳴る・暴言を吐くといった粗暴な言動を繰り返していました。ご相談者は夫に対して強い恐怖心を抱くようになり、不眠や過呼吸に陥るなど、心身に大きな負担を抱えておられました。長女も、こうした夫の言動を目の当たりにして泣き叫ぶなど、子どもへの悪影響も生じていました。
- ご相談者のご要望は、①夫と離婚すること、②長女の親権者を母(ご相談者)の単独とし、引き続き母の監護のもとで安心して育てること、③別居期間中の生活費(婚姻費用)及び離婚後の養育費を適正な額で確保すること、④長女の福祉に配慮した形で面会交流を取り決めること、というものでした。
共同親権が争点となった経緯
- 当事務所の弁護士がご相談者の代理人に就任し、相手方に対して受任通知を送付したうえで、離婚調停及び婚姻費用分担調停を申し立てました。これに対し、相手方は、長女の監護者を自らに指定し長女の引渡しを求める審判及び審判前の保全処分(仮処分)を申し立て、長女の監護をめぐって厳しく争う姿勢を示しました。
- 調停が進む中で、相手方は、離婚そのものには容易に応じず、「離婚後の共同親権とすることが前提であれば、申立人(母)の希望に合わせて柔軟に条件を検討する」との立場を取り、共同親権に関する取り決めがなければ離婚に応じられないと主張しました。これにより、本件は、改正民法により導入された離婚後の共同親権をどのように取り決めるかが、解決の最大の争点となりました。
- これに対し、当方(母)は、当初、夫の粗暴な言動や監護に対する不安を踏まえ、長女の親権者を母の単独とすることを求めていました。しかし、相手方が監護者指定・引渡しの審判及び保全処分まで申し立てて全面的に争う姿勢を見せる中で、手続の長期化は幼い長女の生活の安定を損なうおそれがありました。
解決の内容
- 当方は、長女が引き続き母のもとで安定して生活している実績を重視し、別居前から母が監護の中心を担ってきたこと、別居後も保育園と緊密に連携しながら規則正しい監護を継続していること、母子の良好な関係性などを、陳述書・写真・保育園の連絡帳・母子手帳等の客観的資料を用いて丁寧に主張・立証しました。あわせて、相手方の粗暴な言動が子の情操に与える影響など、子の福祉の観点からの問題点も具体的な事実に基づいて主張しました。
- そのうえで、手続の長期化を避け、長女の生活の安定を最優先する観点から、当方は、①長女が引き続き母のもとで生活すること、②長女の居所の指定に係る親権の行使は母が単独で行えること、③適正な養育費が確保されること、④長女の福祉に配慮した面会交流条項が設けられること、を確保できることを前提に、形式上は共同親権を受け入れる方針へと柔軟に転換しました。
- 婚姻費用については、双方の源泉徴収票をもとに標準算定方式に従って適正額を算定・立証し、調停において、相手方が月額7万7000円を支払うこと、及び、別居開始時から調停成立までの未払分(30万8000円)を支払うことで合意が成立しました。
- 最終的に、長女の親権者を父母双方と定める(共同親権)一方で、長女の居所を母の現住居とし、長女の居所の指定に係る親権の行使は母が単独で行えること(ただし、転居が面会交流の実施に支障を生じる可能性がある場合には事前に誠実に協議すること)を内容とする調停離婚が成立しました。これにより、共同親権という枠組みの中でも、母が長女の監護と居所の決定について実質的な決定権を確保することができました。相手方による子の引渡し・監護者指定の申立ても、当方の主張に沿う形で帰結しました。
- 養育費については、相手方が月額4万8000円を、長女が満20歳(大学・専門学校等に進学した場合は卒業時又は満22歳到来後最初の3月まで)に達するまで支払うことで合意しました。面会交流についても、月2回の宿泊付き交流を認めつつ、相手方が面会交流中に長女の情操や健康に悪影響を及ぼす言動を行わないことを約束する条項、子の福祉を最優先として誠実に協議する条項などを盛り込み、長女の利益に十分配慮した内容で取り決めました。
良い解決を実現できたポイント
① 共同親権を求める相手方の主張に対し、子の生活の安定を最優先に柔軟な落としどころを見出したことです。相手方が共同親権を離婚の絶対条件として譲らない中で、形式的な親権の名目に固執して手続を長期化させるのではなく、長女の居所の指定に係る親権行使を母が単独で行えるようにするなど、共同親権の枠組みの中でも母が監護と重要な決定について実質的な決定権を確保する内容を実現しました。
② 母による安定した監護実績を客観的資料で立証したことです。別居前後を通じて母が長女の監護の中心を担ってきた事実を、陳述書だけでなく、保育園の連絡帳や写真などの客観的資料を用いて具体的に立証し、長女が母のもとで安定して生活していることを説得的に示しました。これが、共同親権の取り決めにおいて母に有利な条件を引き出す土台となりました。
③ 相手方からの子の引渡し・監護者指定の保全処分の申立てに、迅速かつ的確に対応したことです。緊急性の高い保全手続においても必要な主張・立証を速やかに行い、長女の監護環境が安定していることを明確にすることで、長女が引き続き母のもとで生活する結果を確保しました。
④ 子の福祉を最優先とした面会交流条項を整えたことです。父子の交流の機会は確保しつつ、面会交流中に長女の情操・健康に悪影響を及ぼす言動を行わないことを相手方に約束させるなど、長女の利益を守るための具体的な条項を盛り込みました。
⑤ 婚姻費用・養育費を適正額で確保したことです。標準算定方式に基づく的確な主張により、別居期間中の生活費と離婚後の養育費を適正な水準で確保し、母子の生活の安定につなげることができました。
離婚や、共同親権・単独親権、お子様の監護権、面会交流、婚姻費用・養育費などでお悩みの方は、渋谷に所在する馬場綜合法律事務所までお気軽にご相談ください。