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離婚をしたい場合、相手方の同意が得られない場合には、最終的には、離婚調停を経たうえで、離婚訴訟を提起し、離婚を認容する判決を獲得する必要があります。この場合、民法770条1項に定められた「法律上の離婚原因」が必要となります。本コラムでは、配偶者から生活費が支払われない場合に、それが法律上の離婚原因となるのか否かについて、法的な観点や裁判例をもとに詳しく解説します。
民法770条1項は、裁判上の離婚原因として以下の5つを定めています。
このうち、生活費の不払いが問題となるのは主に②「悪意の遺棄」と⑤「婚姻を継続し難い重大な事由」です。生活費の不払いは、夫婦間の扶助義務(民法760条)違反に該当し、「悪意の遺棄」、または、「婚姻を継続し難い重大な事由」離婚原因となり得ます。ただし、単なる一時的な不払いではなく、継続的または悪質な不払いであり、かつ、不払いに正当な理由がない場合に限られます。
ここでは、生活費の不払いが法律上の離婚原因に該当するか否か問題となった主な裁判例を5つ紹介します。
この事案では、夫が勤労意欲を失い、家庭生活が経済的困窮に陥ったため、家庭の維持が困難となりました。夫は妻との夫婦生活について協力する意思や努力を全く示さず、生活費の分担も怠っていました。裁判所は、夫のこのような態度が夫婦の協力義務・扶助義務に違反し、婚姻を継続し難い重大な事由に該当するとして、妻の離婚請求を認容しました。生活費の不払いが、夫婦関係の破綻をもたらす重要な要素となった事例です。
この事案では、妻が家計を預かりながらも浪費を繰り返し、家計が常に不足し、夫に無断で借金や手形の振出しを行うなど、生活費の管理が著しく不適切でした。夫婦で再出発を試みたものの、妻の態度は変わらず、家庭の経済的基盤が崩壊しました。裁判所は、こうした妻の行為が婚姻を継続し難い重大な事由に該当するとして、夫の離婚請求を認めました。生活費の不適切な管理や浪費も、婚姻関係破綻の一因となることが示されています。
この事案では、夫が賭博(競輪、競馬、競艇、麻雀、パチンコ等)に耽り、給料の大半が天引きされ、さらにサラ金等から多額の借金をして散財していました。その結果、家計に生活費がほとんど入らず、妻や家族の生活が著しく困窮しました。裁判所は、夫の行為が婚姻関係の破綻をもたらしたと認め、妻からの離婚請求を認容しました。生活費の不払いが、配偶者の浪費や借金と結びついている場合、離婚原因として認められる傾向が強いことが分かります。
この事案では、夫が高額の借金を抱え、妻に十分な生活費を渡していませんでした。しかし、裁判所は、借金自体がやむを得ない事情であり、妻も共働きをして家計に収入を入れれば生計の維持が可能であること、借金以外に婚姻生活を継続できないほどの支障がないことなどを総合的に考慮し、「婚姻を継続し難い重大な事由」には該当しないとして、妻の離婚請求を棄却しました。生活費の不払いがあっても、他の事情を総合的に考慮し、直ちに離婚原因とならない場合もあることが示されています。
夫が家出をして他の女性と同棲を始め、生活費の送金を途絶えさせた事案では、夫の行為が同居義務違反および扶助義務違反に該当し、悪意の遺棄として離婚原因になると判断されました。生活費の不払いが、配偶者の一方的な家出や別居と結びついている場合、悪意の遺棄として離婚原因となることが明確に示されています。
生活費の不払いは、夫婦間の扶助義務違反として「悪意の遺棄」や「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、法律上の離婚原因となり得ます。
ただし、生活費の不払いが直ちに離婚原因となるわけではなく、不払いの理由や経緯、他の事情(借金のやむを得なさ、配偶者の就労可能性等)を総合的に考慮して判断されます。
生活費の不払いが継続的または悪質であって不払いに正当な理由がない場合や、他の夫婦関係破綻の事情と相まっている場合には、離婚原因として認められる可能性が高まります。
生活費の不払いがある場合、まずは婚姻費用分担請求や調停・審判の手続きを利用し、生活費の支払いを求めていくのが良いでしょう。そのうえで、離婚請求の際には、生活費不払いの具体的な状況や経緯を丁寧に主張・立証することが求められます。
婚姻費用や生活費が支払われてなくて困っている方がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。