ある日突然、配偶者から「離婚したい」との通知が届いたとき、多くの方が動揺し、今後どうすればよいのか戸惑われることでしょう。特に、内容証明郵便など正式な文書で通知が届いた場合には、「もう離婚は避けられないのではないか」と不安を感じるかもしれません。
しかし、離婚は一方的に成立するものではありませんし、通知が届いたからといってすぐに離婚が決まるわけではありません。
本記事では、他方配偶者から離婚の通知が届いた場合に取るべき対応について、弁護士の視点から解説いたします。
まずは冷静に通知の内容を確認する
離婚を求める通知には、内容証明郵便、LINE、メール、または直接の口頭によるものなど様々な形式があります。その中でも内容証明郵便は、離婚の意思が強く、今後法的手続に進む可能性が高いことを示すサインといえます。
通知文の記載内容
通知文には、以下のような事項が記載されていることがあります。
離婚の意思表示
離婚原因
(不貞、性格の不一致、
別居など)財産分与
慰謝料の請求
子どもの親権
婚姻費用や
養育費に関する希望今後の話し合いや
調停申立ての意向
まずは通知文をしっかりと読み、記載された主張や要求の内容を正確に把握することが大切です。
感情的になって相手にすぐ返答するのではなく、冷静に状況を整理しましょう。
通知が届いたからといって離婚が成立するわけではない
離婚は、夫婦の合意がある場合には協議離婚が成立しますが、一方が離婚に応じない場合、他方は家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。調停でも合意に至らない場合、最終的には訴訟(裁判)で離婚の可否が争われます。
他方配偶者による
離婚への同意(合意)
離婚を認める裁判所の判決
いずれかでなければ、離婚を実現することはできません
離婚を望まない場合、応じる義務はなく、今後の対応を慎重に考えることが可能です。
法律上の離婚原因があるかを確認する
仮に相手が「裁判でも構わない」と考えている場合には、民法770条1項に定められた「離婚原因」があるかどうかがポイントとなります。代表的な離婚原因には以下のものがあります。
不貞行為
悪意の遺棄
3年以上の生死不明
強度の精神病で
回復の見込みがないその他婚姻を継続し難い
重大な事由
相手の通知に記載された離婚理由が、これらに該当するかを確認する必要があります。特に、「性格の不一致」や「価値観の違い」は、すぐに裁判離婚が認められる理由にはなりません。ご自身に不貞や重大な非がない場合、相手の離婚請求が認められる可能性は低いといえます。
子どもや財産の問題を見落とさない
子供について
離婚が現実味を帯びてきた場合、親権、養育費、財産分与、慰謝料といった重要な問題を整理する必要があります。特にお子様がいる場合には、どちらが親権者となるのか、どのように面会交流を行うのかなど、将来に大きな影響を及ぼす事項です。
財産分与について
財産分与は、結婚後に夫婦が築いた財産を公平に分ける手続きであり、不動産や預貯金、退職金なども対象になります。
慰謝料について
離婚に際して不利な条件を押し付けられないよう、これらの点についても慎重に検討すべきです
弁護士への早期相談を推奨
通知が届いた時点で、弁護士に相談することを強くお勧めします。弁護士は、通知内容に対する法的評価、離婚原因の有無、将来的なリスクの見通しなどを的確に判断し、今後の対応方針を共に考えることができます。特に、離婚問題は、親権の帰属、面会交流の内容、財産分与の金額など、専門知識の欠如から誤った判断をすると、取り返しのつかない事態となりかねません。
また、直接相手と交渉することなく、弁護士を通じて対応することで、感情的な対立を避け、法的に有利な立場を保ちやすくなります。仮に調停や訴訟に発展した場合にも、準備を整えた上で臨むことが可能です。
通知が届いた時点で、弁護士に相談を!
無視や放置は厳禁
通知を受け取ったにもかかわらず、「どうせ離婚できないだろう」と放置することは危険です。調停や訴訟が提起されると、期日が決められ、無断で欠席すると、相手方の主張が全面的に認定されてしまう可能性もあります。
相手がすでに証拠を収集している場合、突然裁判所から書類が届くこともあります。通知を受け取った段階で動き出すことが、ご自身を守るためには非常に重要です。
すぐに動き出すことが大切です!
他方配偶者から離婚を求める通知が届いた場合、まずは冷静に内容を確認し、法律上の離婚原因の有無、親権や財産などの論点を整理する必要があります。そして、今後の対応方針を早期に決めるためにも、弁護士への相談は極めて有効です。
突然の通知に驚き、不安を感じることもあるでしょうが、一人で抱え込まず、専門家と共に今後の選択肢を検討することで、冷静かつ有利な対応が可能となります。