COLUMN

難航していた離婚問題を調停で解決した事例

2024年7月31日

ご相談の概要

1 30代女性から夫と離婚したいという旨のご相談がありました。ご相談内容の要旨は、次のとおりでした。

  • ①相手方は40代の夫である。婚姻期間は10年程度である。子どもは3名おり、高校生の長女、小学校高学年の長男、小学校低学年の二男がいる。
  • ②ご相談者様は、婚姻以来、夫より精神的虐待や暴言、モラハラなどを受けていた。その反動により、7年ほど以前に他の男性と不貞関係を持っていた。不貞期間中、ご相談者様は、夫との間でも夫婦の営みがあった。その後、ご相談者様は二男を出産した。
  • ③しかし、7年ほど経過した時点で、DNA鑑定を実施したところ、二男が夫の実子でないことが判明した。
  • ④その後、夫からご相談者様に対する精神的虐待やモラハラがより一層過激になった。その結果、ご相談者様は、夫の顔を見ただけで、吐き気を催すような状態になった。
  • ⑤令和4年11月頃、別居を開始した。
  • ⑥その後も、夫からご相談者様に対する執拗な連絡や、過剰な非難のメールやLINEが止まらなかった。
  • ⑦ご相談者様は、別居後、他の男性と交際するに至った。
  • ⑧夫による非難等に耐え兼ねてご相談者様は弊所に離婚の相談をするに至った。

2 弊所は、ご相談者様からのご依頼を受任しました。

    ご依頼者様のご要望は、

  • ①夫との離婚
  • ②その他の離婚条件も自身が履行可能な条件で相手方(夫)との調整を図ること
  • でした。

本件の争点の整理

1 争点の整理
本件の争点を整理すると、次の内容になります。

  • ⑴ 離婚の成立
    離婚の成立自体に関しては、相手方も離婚条件によっては応じるという意思を示していました。そのため、離婚の成否自体は争点から除外されます。
  • ⑵ 子どもの親権
    ① まず、相手方は、3人の子どもの親権の取得を希望していました。
    ② 他方で、従前、子どもの監護養育をしていたのはご依頼者様でした。しかし、ご依頼者様は、月収が13万円前後であり、また、相手方からも十分な養育費の支払を期待できない状態でした。当該事情から、3人の子どもを自身で育てることは非現実的な状態でした。
    ③ 親権については、やむなく、相手方が取得するという方針となりました。よって、親権も争点から除外することになりました。
  • ⑶ 養育費
    ① 子ども3名の養育費について、相手方は月々9万円の養育費の支払を主張していました。
    ② 前述のとおり、ご依頼者様の手取月収は13万円前後でしたので、相手方の養育費の主張には到底応じることができませんでした。当方は、現実的に支払可能な養育費は、月々2~3万円が限度であると考えました。
    ③ ですので、養育費の額は争点となりました。
  • ⑷ 財産分与
    ① ご依頼者様の財産分与対象財産として57万円の現預金がありました。その原資は、児童手当を貯蓄したものでした。
    ② 受領済みの児童手当は、財産分与の対象となるというのが実務上の扱いです。それにもかかわらず、相手方は、児童手当を原資とする現預金57万円はすべて自身が取得すべきであり、財産分与の対象外という主張をしていました。
    ③ このように財産分与は双方の意見に相違があり、争点となりました。
  • ⑸ 離婚慰謝料
    ① 相手方は400万円の離婚慰謝料の支払を主張しました。その理由は、ご依頼者様が現在、他の男性と交際していることが不貞行為に該当すること、二男が実子ではないことを7年後に知るに至り著しい精神的苦痛を受けたというものでした。
    ② 当方は、離婚慰謝料の支払義務自体は認めました。しかし、ご依頼者様の経済的事情から、400万円もの高額の慰謝料の支払は到底行うことができないと主張しました。
    ③ よって、離婚慰謝料の額や支払条件も争点となりました。
  • ⑹ 面会交流
    ① ご依頼者様は、子どもとの自由な面会交流を求めていました。特に、長女は高校生ですので、長女が望む時に自由な面会交流をしてあげるべきと考えていました。
    ② 他方で、相手方は、子ども3名との間で月に1回の面会交流は認めるが、それ以外の交流は一切拒否するとの主張をしていました。また、相手方は、長女からご相談者様に対し、LINEや電話をすること自体も禁止すべきという旨の主張をしていました。
    ③ しかし、当方としては、長女の面会交流は自由に行うべきと考えていました。長女は、母であるご依頼者様との間で、電話やLINEなどで自由な交流を求めていたからです。
    ④ 以上のとおり、面会交流の問題は本件の最も大きな争点となりました。

2 実質的な争点
以上のとおり、本件の実質的な争点は、

  • ①養育費の額
  • ②財産分与
  • ③離婚慰謝料の額及び支払方法
  • ④面会交流

の4点となりました。

解決の内容

1 前提となる方針について
本件を解決するに際して、まずは、「方針の策定」をしっかりと行いました。「方針の策定」をしっかりと行うことにより、

  • ①重要事項を見極めることができ、かつ、重要事項に関して安易な妥協を防止できること
  • ②メリハリの効いた交渉や主張立証が可能となること

などの利点があります。前述のとおり、実質的な争点の絞り込みを行ったことも「方針の策定」の一内容です。
2 本件の具体的な方針―裁判所に対する対応方針
ご依頼者様と協議のうえで、次のとおり、本件の具体的な方針を定めました。

  • ⑴ 裁判所に対する対応方針として、物怖じせずに、しっかりと当方の主張を伝えていくことを方針に決定しました。本件では、二男の父親が夫ではないことや、ご依頼者様が別居後に他の男性と交際中であることなどから、中立な立場であるべき調停委員がこちらに対して予断や偏見を抱いているのではないかと感じる場面が何度もあったためです。
  • ⑵ 確かに、離婚問題は、夫婦双方に落ち度がある事案が大多数であり、当方に落ち度がある部分は、素直に認めることも大切です。弊所としても過ちに対しては相応の責任を取るべきだと考えています。しかし、過ちに対して相応以上の制裁を科することは大いに問題があると考えています。
  • ⑶ そう考えるのは、法律上では「比例原則」という基本原理があるからです。これは、刑事上では罪と刑の均衡、民事上では行為責任とそれに対する損害賠義務の内容とが均衡していなければならないとする基本原理です。つまり、人が過ちを犯したとしても、それに対する刑事又は民事上の制裁は過ちに対して相応なものでなければならないという基本原理になります。本件でも、基本原理である比例原則の観点から、ご依頼者様が相応以上の不利益を受けないように、物怖じしない交渉スタンスを貫く方針としました。

3 争点ごとの解決内容

  • ⑴ 養育費の額
    争点のうち養育費の額については、養育費算定表に基づいて主張を行いました、養育費算定表によれば、養育費は月々3万円程度になりました。最終的には、相手方も月々3万円の養育費で合意しました。
  • ⑵ 財産分与
    ① 財産分与については、児童手当を原資とする現預金57万円は、財産分与の対象になると主張しました。但し、当方の取り分である28万5000円については、離婚慰謝料の頭金へ充当することにしました。
    ② こちらの事項については、裁判所の調停委員から「児童手当は子どものためのお金であるから、全額を親権者である相手方へ渡すべきだ。」ということを伝えられました。
    ③ しかし、既に支給済みの児童手当は、財産分与の対象となるのが確立した実務上の運用となっています。この点をしっかりと調停委員に説明した結果、最終的には、裁判所の理解を得られ、当方の主張どおりの内容で財産分与を行うことになりました。
    このように調停委員であっても誤った知識に基づいて説得をしてくることがあるため注意が必要です。
  • ⑶ 離婚慰謝料
    ① 離婚慰謝料について、相手方は400万円の支払を求めていました。その理由としては、二男が自分の実子ではないという事実により極めて強度な精神的苦痛を被ったというものでした。
    ② 当方は、総額150万円、うち頭金として30万円の支払、残額は月々2万円の支払が限度であると主張しました。この主張の論拠は次の2点でした。
    ・1点目は、ご依頼者様の資力ではこの提案が限度であったことです。
    ・2点目は、150万円を超えると支払困難になる可能性が高く、仮に破産及び免責を受ければ、離婚慰謝料の支払義務が無くなるということを相手方へ伝えるとともに、当方は合意した金額は踏み倒さずに誠意をもって支払っていきたいからこそ、上記の支払条件の主張をしているという旨を強く訴えかけました。
    ③ その結果、離婚慰謝料についても、最終的には、基本的には当方の主張する支払条件でまとまりました。
  • ⑷ 面会交流
    ① 面会交流は最も紛糾した争点でした。
    ② 相手方は、ご依頼者様と長女との自由な面会交流を度々にわたって拒否していました。
    ③ 当方は「子の福祉」の実現を目指しました。具体的には、可能な限り、長女が自由にご依頼者様と電話やLINEで連絡が取れるように話を進めました。
    ④ また、長女が母であるご依頼者様と学校の制服を選ぶための買い物に一緒に行きたがっていたことや、LINEで相談をしてくることも多いこと、長女が料理の作り方などを聞いてくることも多いことなどの具体的な事情や、自由な面会交流の必要性を訴えかけました。
    ⑤ 相手方は、終始にわたって長女とご依頼者様との自由な面会交流には否定的でしたが、最終的には、「長女が面会交流を求めた場合には、相手方はこれを妨げない。」という条項を挿入することで折り合いがつきました。

4 本件の帰結
結論としては、要旨、次の内容で離婚調停が成立しました。概ね当方の方針どおりの結果を実現することができました。

  • ① ご依頼者様と相手方は、調停離婚をする。
  • ② 子ども3名の親権者は相手方とする。
  • ③ ご依頼者様は、相手方に対し、子ども3名が20歳に達するまで、1名につき月々1万円(合計額3万円)を養育費として支払う。
  • ④ 面会交流は、月に1回とし、日時、場所、方法は双方が協議して決める。
  • ⑤ 前項にかかわらず、長女が更なる面会交流を希望した場合には、相手方はこれを妨げない。
  • ⑥ ご依頼者様は、相手方に対し、財産分与として28万5000円を支払う。
  • ⑦ ご依頼者様は、相手方に対し、離婚慰謝料として総額150万円を支払うことを約束し、頭金として30万円、残額は月々2万円ずつの分割弁済を行う。

良い解決を実現できたポイント

良い解決となったポイントは、

  • ①ご依頼者様が相応以上に不利益を受けないように、裁判所に対しても物怖じしない姿勢で臨んだこと
  • ②「方針の策定」をしっかりと行ったこと、すなわち、潜在的な争点うち実質的に争いがある事項を絞り込み、実質的な争点の解決に心血を注いだこと
  • ③面会交流などご依頼者様の正当な要望が可能な限り反映されるように粘り強く調停を進めたこと

などの点にあったと考えています。
離婚の話し合いが難航している方がいらっしゃいましたら、是非、弊所へお問い合わせください。