離婚後、子どもと別々に暮らすことになった親にとって、「子どもに会いたい」「成長をそばで見守りたい」という思いは非常に強いものです。
一方で、もう一方の親との関係悪化や感情的な対立、子どもの年齢や気持ちなどのさまざまな要因から、面会交流が思うように実現されないケースも多く見受けられます。特に、子どもの福祉が最優先であるべきにもかかわらず、親同士の感情が先立ち、交流の機会が失われるような状況は、子どもにとっても深刻な影響を及ぼしかねません。
ここでは、面会交流の基本的な仕組み、取り決めの方法、問題が生じた際の対応、弁護士ができること、そして子どもの福祉の重要性について、弁護士の視点から詳しく解説します。
面会交流とは何か
面会交流とは、民法第766条に定められた制度で、父母が離婚した後に、子どもと離れて暮らす親が子どもと会ったり、電話・メール・手紙などで交流を取ることができることをいいます。
これは親の『権利』というよりも、むしろ子どもが両親と関係を維持する『権利』を保障する制度と理解されています。離婚によって親子関係が一方的に断たれるわけではなく、親としての責任と愛情を継続的に果たしていくために、面会交流は重要な役割を果たします。また、子どもにとって両親のどちらとも安定した関係を維持することは、健全な心の発達や社会性の形成にとって不可欠です。
面会交流の取り決め方
父母間の協議
面会交流の内容は、基本的に父母間の協議によって自由に取り決めることができます。例えば、月に2回、土曜日の午前10時から午後6時まで会う、あるいは誕生日やクリスマスなどの特別な日に会うといった具体的なスケジュールを定めることが一般的です。
当事者間で決まらない場合
当事者間で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に面会交流調停を申し立て、調停委員を交えて合意を目指すことになります。
合意ができない場合
調停でも合意ができない場合には、審判に移行し、裁判官が子どもの利益を最優先に考慮して面会交流の方法を決定します。このとき、子どもの年齢や健康状態、現在の生活環境、親の養育能力や生活状況などが総合的に判断材料となります。
面会交流がうまくいかない場合
無理に会わせることが逆効果になる場合も
実際に面会交流を実施しようとしても、もう一方の親が拒否する、子どもが会いたがらない、スケジュールが合わないなど、さまざまな理由からうまくいかないことがあります。特に、子どもが一方の親に対して恐怖心や不信感を抱いているようなケースでは、無理に会わせることが逆効果になる場合もあります。
面会交流が履行されない場合
感情的な対立を理由に正当な理由なく交流を拒むことは、子どもの健全な発達を阻害する行為ともなりかねません。面会交流が履行されない場合、家庭裁判所に履行勧告や間接強制(罰金を科す)を申し立てることができます。
内容の見直し
調停や審判で決めた内容を柔軟に見直すことも可能です。状況の変化に応じて、子どもにとって最善の形で交流が実現されるよう調整を図る必要があります。
弁護士ができること
交渉の仲介役
面会交流に関する問題は、当事者同士の感情が絡むため、冷静な話し合いが難しくなることが少なくありません。弁護士は、面会交流調停や審判の申し立て手続を代理するだけでなく、交渉の仲介役となり、法的な観点から妥当な条件を整理し、実現可能な形で提案する役割を担います。
建設的な解決を図る手伝い
履行勧告や間接強制の申立てなど、実効性を確保するための手段についても、適切にアドバイス・対応が可能です。弁護士を介することで、感情的な対立がエスカレートするのを避け、建設的な解決を図ることができます。
子どもの利益を第一に
面会交流は親の都合ではなく、あくまで子どもの利益を最優先に考えて実施されるべきものです。子どもの年齢や性格、学校や生活リズムを考慮した柔軟な対応が重要であり、場合によっては段階的な交流や第三者機関の立ち会いのもとでの実施が望ましいケースもあります。特に思春期の子どもについては、本人の意思を尊重しつつ、心のケアにも配慮する必要があります。
親としては「会いたい」「一緒に過ごしたい」という思いが強くても、その気持ちを押し付けることは逆効果となる場合があります。
離婚後も親子の関係を維持するうえで、面会交流は非常に重要な意味を持ちます。しかし、感情的な対立や状況の変化によって、思うように進まないこともあります。そうしたときには、弁護士などの専門家の助けを借りることで、冷静かつ柔軟に問題解決を図ることが可能です。子どもの心に寄り添いながら、親としてできる最善の選択をするためにも、早めの相談をお勧めします。