離婚コラム

【渋谷の弁護士が説明】不倫慰謝料を請求されたが、自分だけ支払うのは不公平ではないか?―求償権について

はじめに

このコラムでは、不倫慰謝料を請求され、その全額を支払ったものの、「なぜ自分だけが全額を支払わなければならないのか、不公平ではないか」と感じている方のために、法律上の重要な権利である「求償権」について詳しく解説します。

不倫は、法律上、不倫をした当事者二人の「共同不法行為」とみなされます。そのため、慰謝料の支払い義務も二人にあります。あなたが支払った慰謝料の一部を、もう一人の当事者であるあなたの不倫相手(請求者の配偶者)に請求できる可能性があります。この記事では、その求償権の具体的な内容、請求できる割合、注意点などを分かりやすく説明していきます。

不倫慰謝料の求償権とは何か?

「求償権」とは、複数の人が共同で負うべき債務を、そのうちの一人が代表して支払った(弁済した)場合に、他の人が負担すべき部分について、その支払いを求めることができる権利のことです。法律的には、本来債務者が支払うべきものを第三者が立て替えて支払った状態が生じ、その清算を求める権利として説明されます。

不倫の慰謝料のケースに当てはめてみましょう。不倫は、不倫をした二人の共同不法行為とされ、慰謝料の支払い義務は二人で連帯して負うことになります。しかし、慰謝料を請求する側(不倫をされた配偶者)は、どちらか一方に全額を請求することが一般的です。もしあなたが慰謝料の全額を支払った場合、それは本来、あなたの不倫相手(請求者の配偶者)も負担すべき部分まで、あなたが立て替えて支払ったことになります。

この立て替えた部分について、不倫相手に対して「あなたの負担分を支払ってください」と請求する権利が「求償権」です。つまり、不倫相手から慰謝料請求を受けて慰謝料を支払った場合、共同不法行為者であるもう一方の当事者に対して、求償権を行使することができるのです。

不倫行為は共同不法行為であること

求償権を理解する上で、まず「不倫行為がなぜ共同不法行為になるのか」を理解することが重要です。不倫行為(不貞行為)は、夫婦間の貞操義務に違反し、婚姻共同生活の平和を侵害する行為として、民法上の「不法行為(民法709条)」にあたります。そして、この不法行為は、既婚者とその不倫相手が共同で行うものです。そのため、民法719条1項に定められる「共同不法行為」が成立します。

共同不法行為が成立すると、加害者である不倫当事者二人は、被害者(不倫をされた配偶者)に対して「不真正連帯債務」を負うことになります。これは、二人が連帯して被害者に生じた損害(精神的苦痛に対する慰謝料)の全額を賠償する義務を負うことを意味します。「連帯して」責任を負うとは、被害者が、加害者である二人のうち、どちらか一方に対して慰謝料の全額を請求することも、あるいは両方に対して請求することもできる、ということです。資力のある側に全額を請求するケースが多いため、不倫相手であるあなただけが慰謝料の全額を請求されるという事態が起こりうるのです。

求償権は慰謝料を支払った場合に請求可能となること

求償権は、実際にあなたが慰謝料を支払うことで初めて発生し、請求可能となる権利です。これを「事後求償」と言います。具体的には、弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得たときに、他の連帯債務者に対して求償権を取得します。

重要なのは、支払った金額が、法律上あなたが負担すべき割合(負担部分)を超えている必要はないという点です。2020年4月1日に施行された改正民法により、この点が明確化されました。改正後の民法442条1項では、連帯債務者の一人が弁済した場合、その額が「自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず」、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分に応じた額の求償権を有すると定められています。

具体例で見てみましょう。

【例】慰謝料総額:300万円。あなたと不倫相手の負担割合:50%ずつ(それぞれ150万円)のケース。

この状況で、あなたが慰謝料請求者に対して100万円を支払ったとします。この100万円という支払額は、あなたの本来の負担部分である150万円に達していません。しかし、改正後の民法では、この場合でも求償権が認められます。

あなたが支払った100万円のうち、不倫相手の負担部分に応じた額を求償できます。

計算式は、「求償できる金額 = 支払った金額 × 相手の負担割合」となります。この例では、100万円 × 50% = 50万円を不倫相手に求償することができます。

さらに、求償できるのは、支払った元金だけではありません。民法442条2項により、以下のものも合わせて請求することが可能です。

・免責があった日以後の法定利息:あなたが慰謝料を支払った日以降に発生する法定利息(2020年4月1日以降は年3%)
・避けることができなかった費用:例えば、弁済のためにかかった振込手数料や、弁護士に依頼した場合の費用など

求償権の負担割合について

求償できる金額を計算する上で最も重要なのが「負担割合」です。この割合は、不倫をした当事者間でどのように決められるのでしょうか。

⑴ 負担割合の決定方法

まず、当事者間で負担割合についての合意があれば、その合意が優先されます。しかし、不倫の当事者間でそのような合意がなされることは稀です。合意がない場合、負担割合は、それぞれの「過失の割合」によって裁判所が判断します。不倫(不貞行為)のケースでは、主に以下のような事情が考慮されます。

・不貞行為に至る経緯:どちらが積極的に誘ったか、関係を主導していたか
・当事者の年齢や社会的地位
・婚姻関係の状況:不倫が始まる前から夫婦関係が破綻していたかどうか
・その他、不貞行為に関する一切の事情

⑵ 既婚者側の負担割合が重くなる傾向

一般的に、負担割合は半々(50%ずつ)と考えられることが多いですが、必ずしもそうとは限りません。特に不倫のケースでは、既婚者である配偶者の方が、より重い負担割合を課される傾向にあります。裁判例の中には、既婚者である配偶者は、他方の配偶者に対して法律上の「貞操義務」を負っており、不貞行為を回避すべき義務があったことを理由として、5割を超える負担割合を認定したものがあります。例えば、既婚者側に主導的な役割があったと判断された場合、負担割合が「既婚者7:不倫相手3」や「既婚者6:不倫相手4」とされることもあります。

⑶ 夫婦間の免除と求償権

ここで注意すべき点があります。慰謝料を請求してきた配偶者が、離婚の際に「あなた(不倫をした配偶者)への慰謝料は免除します」と合意していたとしても、それはあなたと配偶者の間の取り決めに過ぎません。あなたが不倫相手として慰謝料を支払った場合、その不倫相手は、たとえ配偶者から慰謝料を免除されていても、あなたからの求償に応じなければなりません。民法445条の規定により、連帯債務者の一人に対して債務の免除があっても、他の連帯債務者は、その免除を受けた者に対して求償権を行使できると定められています。したがって、相手の「配偶者から免除されているから支払う必要はない」という主張は法的に認められません。

求償権の放棄を求められるケース

あなたが慰謝料を支払う際に、相手方(慰謝料を請求してきた配偶者)から「求償権の放棄」を求められることが非常に多くあります。これは、慰謝料支払いの合意(示談)における重要な交渉ポイントとなります。

⑴ なぜ求償権の放棄が求められるのか?

求償権の放棄が求められるのは、特に不倫が発覚しても夫婦が離婚せず、婚姻関係を継続するケースです。その理由は、被害者である配偶者の経済的な視点にあります。

・被害者は、不倫をした自分の配偶者と家計を共にしています。
・もしあなたが慰謝料を支払った後、求償権を行使して不倫をした配偶者に支払いを請求すると、そのお金は結局、夫婦の共有財産から支出されることになります。
・つまり、被害者から見れば、不倫相手から受け取った慰謝料が、形を変えて自分の家計から出ていくだけ、ということになりかねません。

このような事態を避けるため、被害者側は「慰謝料は全額、不倫相手であるあなたに負担してほしい」と考え、慰謝料支払いの条件として、自分の配偶者に対する求償権を放棄するよう求めてくるのです。

⑵ 求償権放棄条項

求償権を放棄する場合、通常、示談書や合意書に以下のような「求償権放棄条項」を盛り込むことになります。

【条項例】
「乙(あなた)は、甲(被害者)に対し、本合意書第〇条に基づき支払う慰謝料について、丙(不倫をした配偶者)に対する求償権を一切放棄し、これを将来にわたって行使しないことを確約する。」

この条項を含む合意書に署名・捺印すると、あなたは法的に求償権を失い、後から不倫相手に支払いを求めることはできなくなります。慰謝料の金額交渉の際には、この求償権放棄が条件に含まれているかどうか、含まれている場合はその分、慰謝料の減額を交渉する材料となり得ます。もし、求償権の放棄条項を入れずに合意した場合、後から求償をめぐって元不倫関係にあった当事者間で再び紛争になる可能性があるため、合意の際にはこの点を明確にしておくことが極めて重要です。

弊所のサービスの特徴

不倫慰謝料を請求された場合、対応は非常に複雑です。請求された慰謝料額が妥当かどうかの判断、相手方との交渉、そして本稿で解説した「求償権」の問題が絡んできます。

弊所では、不倫慰謝料請求への対応のみならず、その後の求償権行使に関する法務も併せてご提案しています。慰謝料の減額交渉と同時に、将来の求償権をどのように扱うか(放棄する代わりに減額を求めるか、あるいは権利を確保して後日行使するか)という戦略的な視点でサポートいたします。不倫慰謝料請求の法的な対応と、その後の求償権の問題をセットで解決したいとお考えの方は、是非、弊所へお問い合わせくださいませ。

まとめ

今回は、不倫慰謝料を支払った場合の「求償権」について解説しました。

不倫は共同不法行為:不倫をした二人が連帯して慰謝料の支払い義務を負います。

求償権の発生:あなたが慰謝料を支払った場合、もう一方の当事者(あなたの不倫相手)の負担部分について、支払いを求める「求償権」が発生します。

負担割合:負担割合は必ずしも半々ではなく、不倫関係を主導した側や、貞操義務を負う既婚者側の負担が重くなることがあります。

求償権の放棄:相手方との示談交渉において、慰謝料減額の代わりに「求償権の放棄」を求められることが多く、重要な交渉ポイントとなります。

不倫慰謝料を請求され、一人で全額を負担することに疑問を感じた場合、求償権の行使は正当な権利です。しかし、その行使には負担割合の算定や相手方との交渉など、専門的な知識が必要となります。安易に高額な慰謝料の支払いに応じたり、求償権を放棄する合意をしてしまったりする前に、まずは一度、渋谷駅付近の馬場綜合法律事務所へご相談ください。

この記事を書いた人

馬場 洋尚
(ばば ひろなお)

東京都出身。
令和元年12月、渋谷駅付近で馬場綜合法律事務所を開設。
法的問題の最良の解決を理念とし、離婚、相続、遺言、一般民事、企業法務など幅広く手がけています。その中でも離婚・男女問題には特に注力して活動しています。ご依頼者の方と密接なコミュニケーションを取りつつ、ひとつ一つのご案件に丁寧に接することを心掛けています。

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