離婚コラム

【渋谷の弁護士が教える】性格の不一致は離婚の理由(離婚原因)になる?

はじめに

渋谷駅付近で馬場綜合法律事務所を運営している弁護士の馬場洋尚と申します。夫婦の一方が離婚に合意しない場合、裁判で離婚を認めてもらうためには、法律で定められた離婚原因(法定離婚事由)が存在することが必要です(民法770条1項)。法定離婚事由には、不貞行為や悪意の遺棄などがありますが、「性格の不一致」は明記されていません。

このコラムでは、多くの夫婦が離婚理由として挙げる「性格の不一致」が、法的に離婚原因として認められるのか、どのような場合に認められるのかについて、裁判例を交えながら詳しく解説します。

性格の不一致とは何か?

「性格の不一致」は、離婚調停の申立て理由として最も多く挙げられるものですが、その内容は「性格が合わない」「一緒にいるのが苦痛」など多岐にわたります。夫婦はもともと育った環境が異なる他人同士であるため、性格や価値観、生活観に多少の違いがあるのはむしろ当然のことです。そのため、単に「性格が合わない」と抽象的に主張するだけでは、法的な離婚原因として認められるのは困難です。

一方で、性格の不一致が原因で様々なトラブルが積み重なり、夫婦関係が修復不可能なほどに破綻してしまうことはあり得ます。当事者にとっては最も深刻な離婚理由である「性格の不一致」が、法的にどのように評価されるのか、その乖離がこの問題の難しさを示しています。

夫婦の性格の不一致の具体例

「性格の不一致」は非常に抽象的な言葉ですが、具体的には以下のようなケースが考えられます。これらは、裁判例などで「勝手」「わがまま」「独善的」「自己中心的」「陰気」「頑固」「無口」「内向的」「家庭的ではない」「思いやりを欠く」といった言葉で表現される性格の違いが、具体的な生活場面で現れたものです。

金銭感覚の違い:一方が浪費家で、もう一方が倹約家であるなど、お金の使い方に関する考え方が根本的に異なる。

休日の過ごし方の違い:一方は家で静かに過ごしたいのに、もう一方は常に外出したいなど、余暇の使い方の希望が合わない。

清潔感の違い:掃除や整理整頓の基準が大きく異なり、一方がもう一方の衛生観念に耐えられない。

子育てに関する価値観の違い:教育方針やしつけの方法について意見が対立し、譲り合えない。

コミュニケーションのあり方:一方は何でも話し合いたいが、もう一方は無口で対話を避けるため、意思疎通が図れない。

異性との交友関係:どこまでが許されるかという基準が異なり、一方が不安や不満を抱く。

仕事への価値観の違い:仕事の優先順位や働き方についての考えが異なり、家庭生活とのバランスが取れない。

食生活の違い:食事の好みや習慣が大きく異なり、毎日の食事が苦痛になる。

親族との付き合い方:互いの実家との距離感や関わり方について、考えが大きく異なる。

性格の不一致で問題となる離婚原因

性格の不一致それ自体は、民法770条1項で定められた法定離婚事由ではありません。しかし、性格の不一致が原因で夫婦関係が深刻に破綻し、回復の見込みがない状態に至った場合には、同項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するとして、離婚が認められる可能性があります。

「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻関係が破綻して回復の見込みがない状態を指します。これが認められるかどうかは、

・婚姻中の当事者双方の行為や態度
・婚姻継続の意思の有無
・子の有無や年齢
・双方の年齢
・別居の有無とその期間

など、婚姻に関する一切の事情を考慮して、客観的に判断されます。したがって、性格の不一致を理由に離婚を求める場合、その不一致が原因で夫婦の精神的交流が阻害され、客観的に見て婚姻関係が破綻していることを、具体的な事実の積み重ねによって主張・立証する必要があります。

ただし、共同生活を営む以上、夫婦には互いに性格の不一致を乗り越える努力をする義務があるとされています。その努力を怠った場合には、破綻の責任を問われることもあります。また、離婚請求者が婚姻破綻について専らまたは主として責任がある場合(有責配偶者)、その離婚請求は原則として認められません。

性格の不一致が離婚原因に該当するか否か問題となった裁判例

⑴ 生活観・人生観の隔絶を理由に離婚を認めた事例(東京高判昭54・6・21)

学究的で知的水準の高い生活を望む夫と、平凡で平和な家庭生活に満足する傾向にある妻との間の離婚請求の事例です。妻は、夫との共同生活における緊張や心労からヒステリー性発作を数十回起こしたことがありました。一審では離婚請求が棄却されましたが、高等裁判所は、夫婦関係破綻の最大の原因が、夫と妻の生活観・人生観上の隔絶(いわゆる性格の不一致)にあると判断しました。そして、このような隔絶はもはや修復不可能であるとして、一審判決を取り消し、夫からの離婚請求を認めました。この裁判例は、どちらか一方に明確な有責行為がなくても、埋めがたい価値観の違いが婚姻関係の破綻原因となり得ることを示しています。

⑵ 夫婦間の精神的不協和を理由に離婚を認めた事例(横浜地判昭59・7・30)

活発な性格の妻が、真面目だがやや柔軟性を欠く夫に対して離婚を請求した事例です。裁判所は、婚姻生活が不自然な状態となった重要な原因は、夫婦間の精神的な不協和や、妻の夫に対する絶望感・愛情喪失にあると指摘しました。そして、これは夫婦や結婚生活に対する双方の考え方の隔たり(性格の不適合)に由来するものであり、婚姻関係はすでに破綻していると判断し、妻からの離婚請求を認めました。この事例は、性格の不適合から生じる精神的なすれ違いや愛情の喪失が、婚姻破綻の核心的な原因として認められることを示唆しています。

⑶ 短い同居期間と長い別居期間、性格の相違を理由に離婚を認めた事例(東京地判昭59・10・17)

同居期間が約3年弱であるのに対し、別居期間が5年以上に及んだ夫婦の事例です。同居中から口論が絶えず、別居後も関係改善の兆しが見られませんでした。原告(離婚を求める側)の離婚意思は固いものでした。裁判所は、口論の原因が双方の性格や言動にあり、それが容易に変化する見込みがない以上、妥協し難い性格の相違から生じる継続的な不和によって婚姻関係は破綻し、回復の見込みがないと判断しました。そして、このような破綻は「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして、離婚請求を認めました。短い同居期間と長期の別居という客観的な事実が、性格の不一致による破綻を裏付ける重要な要素となったケースです。

⑷ 夫婦の役割分担に関する見解の相違と長期別居を理由に離婚を認めた事例(東京高判平29・6・28)

妻Xが、流産や妊娠中の夫Yの冷淡な対応、育児への非協力などを理由に離婚を求めた事案です。一審では、妻が主張する事実は夫婦間で日常的に生じうる不満の範囲内であり、夫の言動は婚姻関係を破綻させるほどの有責行為とは認められないとして、離婚請求を棄却しました。

しかし、高等裁判所は、夫婦の役割分担に関する見解の相違を克服できないまま、妻の離婚意思が強固であり、翻意の可能性が見いだせないこと、別居期間が3年5か月以上に及び、復縁に向けた具体的な動きもないことなどを指摘。夫婦喧嘩の範疇にとどまらず、婚姻関係は既に修復不能なまでに破綻していると判断し、一審判決を取り消して妻の離婚請求を認めました。どちらか一方に決定的な非があるわけではなくとも、価値観の相違と長期の別居によって関係が客観的に破綻していると認められた事例です。

⑸ 双方に原因があり、婚姻継続の意思がないとして離婚を認めた事例(東京高判昭28・6・15)

夫の母が妻への理解に乏しく、夫も妻をかばう努力を怠り、一方で妻も順応性に欠けていたという、双方に原因がある事例です。夫婦ともに婚姻関係を継続する意思がないことを明確にしており、互いに離婚を求めていました。

裁判所は、このような状況は双方の事情が競合して婚姻関係に破綻を来たしたものであり、「婚姻を継続し難い重大な理由がある」と判断し、双方からの離婚請求をいずれも理由があるとして認めました。この事例は、破綻の原因が一方だけにある必要はなく、双方に原因がある場合でも、関係が修復不可能で、両当事者が離婚を望んでいる場合には離婚が認められることを示しています。

まとめ

以上のとおり、「性格の不一致」それ自体は法律で定められた直接の離婚原因ではありません。しかし、性格や価値観の相違が原因で夫婦関係が深刻に悪化し、客観的に見て婚姻関係が破綻して回復の見込みがないと判断される場合には、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚が認められることがあります。

裁判所が破綻を判断する際には、単に「性格が合わない」という主観的な主張だけでなく、

・性格の不一致から生じた具体的なエピソードの積み重ね
・関係修復のための努力の有無
・別居の事実とその期間
・相手方の不貞や暴力といった他の有責事由の有無

といった様々な事情が総合的に考慮されます。事案ごとに詳細な事実関係を検討し、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」といえるか否かが判断されることになります。性格の不一致を理由とする離婚でお悩みの方は、渋谷駅付近の馬場綜合法律事務所にお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

馬場 洋尚
(ばば ひろなお)

東京都出身。
令和元年12月、渋谷駅付近で馬場綜合法律事務所を開設。
法的問題の最良の解決を理念とし、離婚、相続、遺言、一般民事、企業法務など幅広く手がけています。その中でも離婚・男女問題には特に注力して活動しています。ご依頼者の方と密接なコミュニケーションを取りつつ、ひとつ一つのご案件に丁寧に接することを心掛けています。

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