「不倫・不貞慰謝料を請求されたら」―対応方法

目次
はじめに
1 初めまして。渋谷駅から徒歩8分のところに所在する馬場綜合法律事務所の弁護士の馬場洋尚と申します。
2 不倫・不貞慰謝料の支払を求める文書が送れてきたという場面に直面し、どう対応したらよいか分からないという方は、是非、この記事を読んでください。きっとお悩みの解決の一助になると思います。
不倫・不貞慰謝料の支払を求める文書の内容
1 自身の配偶者が特定の相手と不倫・不貞をしていると疑っている方(以下「請求者」といいます。)が、不倫・不貞の疑いがある方に対し、不倫・不貞慰謝料の支払を求める文書を送付することがあります。
2 弁護士の名義で送られてきた場合には、請求者は弁護士に依頼済みということになります。
3 不倫・不貞慰謝料の支払を求める文書は、内容証明郵便の方式で送られてくることが多いです。
4 また、「令和〇年〇月〇日までに慰謝料〇円を下記の口座にお振込みください。期日までにお振込みを確認できない場合には、民事訴訟等の法的措置を検討いたします。」という旨が記述されているケースが多いです。
対応方法について
1. 対応方法の要旨
不倫・不貞慰謝料の支払を求める文書が届いた場合の対応方法は、次の⑴~⑶のとおりになります。以下では項目ごとに解説をいたします。一番重要なことは、必ず専門家である弁護士に相談してから、対応するということになります。
- 弁護士への相談前に請求を自認しないこと
- 必ずしも指定期日までに支払う必要はないこと
- 必ず事前に弁護士に対応方法を相談すること
2. 弁護士への相談前に請求を自認しないこと
弁護士への相談前の段階で、不倫・不貞慰謝料請求を認めない、自認しないことが非常に大切です。その理由は、次の⑴~⑶のとおりです。
- 慰謝料請求権が法的に発生していない可能性があること
- ① まずは、請求者による不倫・不貞慰謝料請求権が法的な権利として発生していない可能性があり得ます。
- ② 不倫・不貞慰謝料の請求権が発生するためには、法律上、必要な要件をすべて満たす必要があります。法的な要件をひとつでも欠く場合には、請求権は発生しないことになります。このような可能性があり得るにもかかわらず、自身の判断で、請求された不倫・不貞慰謝料を支払ってしまうと、本来、支払う必要のない金額を支払ってしまうことになります。しかも、不倫・不貞慰謝料は、100~500万円程度の金額を請求するのが通常であり、仮に、本来発生しないにもかかわらず、支払ってしまうと、極めて高額な損失を被ることになります。
- ③ 以上の次第により、不倫・不貞慰謝料の請求を受けた場合には、まずは、弁護士への相談のうえで、不倫・不貞慰謝料請求権の発生の有無に関して、法的な助言を受けることが必要です。
- 慰謝料の金額が法的に妥当な金額とは限らないこと
- ① 不倫・不貞慰謝料請求による文書では、慰謝料として200~500万円の金額を請求するケースが多いです。
- ② この金額は、必ずしも法的に妥当な金額であるとは限りません。また、請求者側としては、最大限の金額を請求することが多いです。法的な妥当な範囲を超えた金額を請求したとしても、例外的な場合を除いては違法となるわけではないからです。
- ③ ですので、自身の判断で不倫・不貞慰謝料請求を自認してしまうと、法的に過大な金額の支払を余儀なくされてしまいます。
- ④ そこで、事前に弁護士に相談のうえで、慰謝料の金額が法的に妥当か否かの法的助言を受けたうえで、対応方法を判断することを推奨いたします。
- ⑶ 自認すると撤回が困難となり得ること
- ① 不倫・不貞慰謝料請求を、自認してしまうと、後に撤回することが困難となる可能性があります。その理由は、自認によって慰謝料の支払合意や支払約束が成立したと判断されてしまうケースがあるからです。
- ② 自認を文書やメールなどの証拠に残る形で行ってしまうことは、もちろん、口頭であっても、録音されていることもあるため、撤回することが困難になる可能性があります。
- ③ もちろん、真実、不倫・不貞慰謝料請求権が発生しており、かつ、法的に妥当な金額であるのであれば、自認することは悪い判断ではありません。
しかし、弁護士への相談前に自らの判断で自認してしまうと、本来なら法的に請求権が発生していないのに認めてしまうことや、法的な権利として発生していても不当に高額な金額を認めてしまうような状況が発生し得ることになります。 - ④ そのため、仮に、不倫・不貞慰謝料請求権を自認する場合であっても、弁護士から法的な助言を受けたうえで、正しい情報に基づいて判断を行う必要があります。
3. 必ずしも指定期日までに支払う必要はないこと
- 不倫・不貞慰謝料の支払を求める文書には、「令和〇年〇月〇日までに慰謝料〇円を下記の口座にお振込みください。期日までにお振込みを確認できない場合には、民事訴訟等の法的措置を検討いたします。」という旨が記述されていることが多いです。
- もっとも、仮に、弁護士名義の文書であっても、支払期日の指定には、法的な拘束力があるわけではありません。
- 他方で、支払期日を経過した場合には、民事訴訟等の法的措置を行う旨が記述されているケースが多く、直ちに支払を行わないと、民事訴訟を提起されてしまうとお考えになる方も多いと思います。 しかし、この場合でも、支払期日が経過するまでに、文書に記載の法律事務所の担当弁護士へ電話を入れて、「検討する時間を頂きたいので、〇月〇日まで待ってほしい。」と伝えれば、1週間~4週間程度であれば、回答を待つ弁護士が多いと思います。
- ⑷ 以上のとおり、支払期日が差し迫っている場合には、請求者側(文書が弁護士名義の場合には担当弁護士)に事前に連絡を入れて、一定期間待って頂いたうえで、その間に、弁護士による法律相談を受けることが望ましいです。
4. 必ず事前に弁護士に対応方法を相談すること
- 最後に、一番重要なことは、必ず専門家である弁護士に対応方法を相談することです。
- 以上の述べたとおり、不倫・不貞慰謝料請求の支払を求める文書に対しては、主に2つの点に注意する必要があります。第1点は、事実関係によっては、そもそも不倫・不貞慰謝料請求権が法的に発生していない可能性もあり得ることです。第2点は、仮に、不倫・不貞慰謝料請求権の発生が認められる場合でも、必ずしも適正額が請求されているとは限らず、適正額を精査する必要があることです。
- 不倫・不貞慰謝料請求を受けた場合には、主に以上の2点について、事前に、法律の専門家たる弁護士に相談することをオススメいたします。
- 不倫・不貞慰謝料請求の支払を求める文書が届いてお悩みの方は、弊所へご相談ください。
この記事を書いた人

馬場 洋尚
(ばば ひろなお)
東京都出身。
令和元年12月、渋谷駅付近で馬場綜合法律事務所を開設。
法的問題の最良の解決を理念とし、離婚、相続、遺言、一般民事、企業法務など幅広く手がけています。その中でも離婚・男女問題には特に注力して活動しています。ご依頼者の方と密接なコミュニケーションを取りつつ、ひとつ一つのご案件に丁寧に接することを心掛けています。